どうしても、奈美悦子!

  最近、長女がテレビに出たぁ〜い、と頻繁に言う。2歳のときに一度TV CMに出たことがあるが、本人はあまり意識してないようだ。頻繁に長女の希望を聞く私はついつい真剣に捕らえてしまう。
 私も幼い頃というか、中学のときにオーディションを受けたことがある。たしか、富田靖子が出た「アイコ16才」という映画だったと思う。もちろん、惨敗。高校のときはモノマネのオーディションに制服のままフジテレビに行った。血すじか?
 娘の希望を叶えるとはいっても、まがいものの怪しいところへは行かせられない。ちょうど、新聞の広告に有名な劇団が載っていた。出身者は今活躍している人が多い。ここはいいかも!なんて思ってみたり。

 旦那の実家に向かう車の中で、私は切り出した。旦那とよ〜く話ができるのは大概移動中の車の中。普段はあまり会話が成り立たない。旦那の頭の中は、アニメ、仮面ライダー、プラモそしてパソコンのことでいっぱい。私が話をしてもほとんど聞いてない。人の話を聞いてない天才だ。でも、運転中は聞く耳があるらしく、話が弾むのだ。
 「ねぇねぇ。TV出たいって言っててね、もし出すならしっかりしたところからがいいと思うけど」(出られる保障もないのに、親ばかである。)
 「う〜ん。芸能界ってさぁ。やくざの世界じゃない?」
 (それをいうなら、水商売じゃない?)
 「やっぱりさぁ〜芸能界に入るなら、奈美悦子みたいな感じでさ…」
 (えっ?奈美悦子?)
 「なんで、奈美悦子なわけ?あんまり、たとえないけどぉ〜」
 そして旦那は奈美悦子について語りだした。目標とさせる芸能人は奈美悦子。奈美悦子は細く長く芸能界で息が長い。どこにでも出ていることがいい!などなど。でも私には疑問でならなかった。5歳の娘の目標に掲げたのが、奈美悦子。奈美悦子が悪いわけではないが、例えないでしょう。あまりにシブすぎて笑ってしまった。

 家に帰ってきても奈美悦子。大きなトラブルもなく、無難に芸能生活を送っているのがいいと。
 そんなだんなに一撃が。
 「あの芸能人、破産かなんかしてるよ。」おばあちゃんの一言が。
 「え〜!?」 旦那の理想は一瞬のうちに打ち砕かれてしまった。
 まだまだ、詰めが甘いのう、だんなちゃん!