アニメイト野郎

 暑い陽気も終わり、ひんやりとする風が吹き始めた。
 ダンナのマラソン練習に熱が入ってきた。秋のこの時期、マラソン大会参加が目白押しなのも、理由である。相変わらず、小学生の通学路にもなっているコースを1周1q×10で10qかける。小学生の視線をけん制しながら。毎日同じ場所、同じ風景、ほんとよく飽きずに走っているなぁ・・・いつも感心してしまう。

 彼は私と違って、「継続は力なり」の人である。知り合ったとき、日記を中学生のときからずーとつけているというから驚いた。日記というのは、三日坊主だと思っていたからだ。彼から学ぶことが多く、また自己嫌悪に陥ることも多い。けんかをしても、的を得ているから悔しい。しかしその通りだから、いつも負けてしまう。尊敬、感心なのだ。酒もたばこもやらない、趣味はマラソンと模型作り、言うことはもっともで。カンペキに思える彼にもまぬけな顔がある。

 彼はいつもマラソン練習のときに、コンビニに寄って水分補給をする。ただ、財布を持っていては練習の邪魔になるため、クオカード1枚をウエストバックに忍ばせている。毎日同じ時間に同じコンビニに行き、同じ店員と顔を会わせる。そして、体から出て行った水分の補給をはかる。

 その日は苦笑いしながら、走り終えて帰ってきた。どうしたのか聞くと、「今日、カードの残高足りなくて・・」じゃー飲み物買えなかったのか、かわいそうになぁと思ったら、「46円借金してきちゃった。」とか言うじゃない!恥ずかしいわ、まったく。コンビニに借金なんて聞いたことないわっというと、彼はいやにさわやかに「いつも行ってるからじゃない」と言ってのける。すぐさま46円を返しに行くようにいいながら、呆れていた。前代未聞だわ、普通お金足らなかったら、買ってこないのに。

 そして彼は何もなかったように、次の日も走った。空気がおいしいさわやかな朝、この日もニヤニヤ顔で帰ってきた。46円返したかの確認をした私はホッとしていた。・・のも束の間、「今日も足らなくてさぁ〜、また借りちゃった。」はぁ〜!?いくら?「213円」おいおい大丈夫?少し心配になってきた。連日ってのはちょっと・・・。そんな心配をよそに彼は娘を自転車に乗せ、軽快に買い物がてらコンビニへ借金を返しに行った。

 さすがに少しは自分でもこれじゃいけないと思ったのか、その次の日は気合が入っていた。度数満タン、これでよし!!いつも通りの走りが始まった。私はもう失敗はしないだろうと信じて?!朝食を作りながら帰りを待っていた。「ただいまぁ〜」お!帰ってきたな、とりあえずお約束のように聞いた。今日は足りた?「もちろん、足りたよぉ〜」そんな言葉が返ってくるはずだった。しかし彼の口から出た言葉は「今日、買えなかったの。」えー?どうしたの?カード持って行ったでしょ?「あのね、2回も度数が足らなかったから、カードの度数示す穴を手で確認したの。」うんうん、それでそれで・・「そしたら、店員さんにこのカード使えませんって言われて。」なんで?「アニメイトのカード出しちゃってたの。」アニメイトって?ちょっとオタクっぽいにおいがするけど?「プラモで使うペンをそこで買ったの。」じゃ買えなかったの?「うん、だってそのカードしか持っていかなかったんだも〜ん」アハハハハハァ〜借金・借金・アニメイトかぁ〜!!

 子供たちがまだ寝ているのも忘れて、大笑い。私の頭の中をアニメイトがかけめぐった。絶対、あんたのことコンビニのスタッフ達は”アニメイト野郎”って影で呼んでるよ!今日もアニメイト野郎来たよ。本日のアニメイト情報〜とか言ってるよ、きっと。私だったら絶対言っちゃうよ〜とからかいまくって大爆笑!!朝からお腹の肉がよじれちゃうほど、笑った。
 何食わぬ顔でカードをサッと出して澄ましていたら、店員にこれ違いますよと言われ慌てふためく姿が想像できてしまって、笑いがとまらない!!
 ちゃんとカード見て確認したのぉ〜?と聞くと、「うぅうん、指で触っただけ。」おいおい、見なさいっての!!いやぁ、さすがAB型。おもしろいほどの二面性だわ。次回はどんなおもろい話が舞い込んでくるのかしら・・ハラハラドキドキワクワク待ち遠しい。それにしても、笑いの持続性が高いボケ話だわ。思い出すだけで笑っちゃう!!