気持ちをいれかえて

 毎日通る道、何気なく通っている道。うっすら灯っている街灯、人恋しく風にゆれている赤提灯。交差点を行き交う人々、せわしなく走っている車達。こんな風景も見慣れていると当たり前で、特別な感情は沸いてこない。

 車を運転中、ふと思った。もし今通っている道、通り慣れた道が、一度も通ったこともない不安だらけの道だったら・・・。パチンコ屋のネオン、飲み屋の看板、ただの空き地さえも新鮮で、しかも注意深く見渡して小さな路地も見逃さないように、慎重に慎重に。一歩一歩確実に行こうと背を正す。

 そんなこんな思って、いつでも初心忘れるべからず、なんだなぁなんて。
 この何気ない日常での思いは、ダンナのプラモ作りに反映しているのだ。
 「ねぇねぇ、ちょっとちょっとだけ見て見て・・・。」
 作品と呼んでいるプラモ軍団を大事そうにかかえて、ダンナは声も高らかに飛んでくる。いつもながらのジオラマだ!ベースはさすがに腕を上げた感がある。・・がガンダム達との調和がいまひとつ。あれやこれや、駄目出しというなの注文をつけるが、ダンナの目は駄目出しのダメージなんてなんのその、目は光り輝く・・とはいいがたく、強いて言えば爛々・・いやぁ〜ギラギラして益々絶好調〜!!

 パステル、茶漉し、毛先ボサボサの乾いた筆、道具も万全、今にも鼻歌が出てきそうな調子の良さ。ふと気が付くと、まだやってる。
 「いいかげんにしたら?」
 「ねぇねぇ、どおどお?このくらいかな?ねぇ〜見てよぉ〜。ねぇねぇ。」
 ダンナはもううざいほど。そんなダンナに、子どもをさとすように・・・
 「一晩置いて、また明日見てごらん。きっと、新鮮な気持ちで客観的に見れるよ。」
 この時ばかりはやたらに素直で、「うん!そうだね。そうするよ!!」
 私の言った意味が本当にわかったのかどうかはわからない。ただ、ダンナに言うことで、私自身一歩引いて考えること、いつも新鮮な気持ちでいようって気になる。

 いつも見慣れた道でも心をちょこっと入れ替えるだけで、新鮮な道に見えてくる。ダンナのプラモ作りの熱意もちょこっと見方を変えてみようかな?私もプラモが面白くなるかも・・・。でも、これはまだ内緒!!ダンナに知られたら「え〜!!おもちゃつくっていいの〜。やったぁ〜!あのね、あのね、作りたいのはね・・・・」なんて声が聞こえてきそうだから。