パンツマーン!

 さっそうと走る。風を切って走る。自分への挑戦のために、走っている。私のダンナはフルマラソンを趣味にしている。42.195kmってのは、やはり甘いもんじゃないらしい。まぁ、歩くのだってしんどいのに、走ろうってんだから並じゃないことは確かだ。でももうすでに10回以上も完走しちゃっている。いやはや、やっぱりタダモノではないなぁ。

 ほぼ毎日早朝5時頃からジョギングにいく。我が家の近くに丁度1周1kmというコースがある。彼はそのコースを10周することが日課なのだ。仕事のある日は早朝だが、休日は少しゆっくりしてのスタート。自分の夫ながら感心してしまう。よくも飽きずに同じ所をクルクル走って・・・。

 ある朝、数あるランニングウェアの中から彼が選んだのは、白いランニングウェアとランニングパンツ。準備体操を早々にして、いつもの日課が始まった。見通しがいいランニングコース、まぁそこは小学生達の通学路でもあった。彼がシャシャと走っている脇を子供たちがトコトコと歩いている。子供というのは、正直者というか残酷者というか、思ったことをすぐ口にしてしまう。例外なく彼も標的になった。白いウェアの彼に向かって子供たちは、叫んだ。「いやぁーい、パンツマーン!!」子供には白いランニングパンツが、下着のパンツに見えたらしい。パンツマンの異名をとった?彼は、数日に渡ってからかい半分の子供の声に、恥ずかしがりながら走った。でもそんな子供たちも次第に「パンツマン!がんばれー!!」と応援するようになった。いやぁ〜なんていい話なのかしら。私はダンナから聞いてホッとしていた。

 ・・・のもつかの間!ダンナはいつも通りランニングに出かけた。だいたいいつもは1時間程度走る。私はその間、娘と遊んだり家事をこなしたり。なのに、1時間もしないうちに帰ってきた。「どうしたの?」いつもより汗もそんなにかいていない。「あのね、ランニングパンツ、後ろ前に履いちゃってたの・・・。」彼は走っている間に気がついて、早目に切り上げてきたのだった。
 微妙にパンツの前と後ろは長さが違う。私はちょっと走ってみせるように言った。彼は廊下を軽く走ってみせた。あははははぁー、尻、尻、尻が出てるよー!!「そのまま走ってたら、今度はオシリマンだー!!」彼の人生はおもしろい、彼を見逃せないのだ。今後もパンツマン、もといオシリマンの動向は見逃せないのだ。