このくさやろう!

  あー今日もよく働いたなぁ。自分を自分でねぎらいながら、家路についた。私はナースをしている。深夜勤務を終えて、あとはお楽しみの”寝る”だけだった。深夜勤務とは午前0時30分〜午前9時15分までのこと。まぁ要は、みんなが夢の中の時に、目をギラギラさせて働いているということ。我ながら、なんか人間メカニズムに反していること、よくやってるなぁと感心するやら、あきれてるというか。自分が具合悪いのに、患者の世話をするという妙なところもあるのになぁ・・・。

 なにはともあれ、この日は疲れてはいたが元気に帰ってきた。深夜勤務の喜びは、吸い込まれていくように眠りにつけること。煩わしいことなんて、考える余地もない。スーっとね!スーっと!胸躍らせながら、「ただいまー。」

 そこには、ダンナが待っていた。「おかえり、お疲れさま。ゆっくり休みなね!」おーなんて温かいお言葉。ちょっぴり仕事の疲れが癒される。軽くお風呂に入って、寝る準備。まっぴるまに寝るから、はじめは窓からの日射しが眩しいとかなんとか思いつつ・・・。

 そばでダンナはニコニコしている。あらー、寝付くのを見守ってくれているのねぇ〜。なんてやさしいダーリンなのかしらん・・・。ちょっと心地よく眠りについた。
 普段はよだれなんてでないのに、深夜勤務は激務のせいか寝ている間にツゥーっと流れることがある。枕に垂れ落ちる寸前で、ずずぅっと吸い上げ手で拭う、そして何事もなかった様にまたまたスーっと寝てしまうのだ。

 ・・・が、安眠が妨害された。くっくさっ!!なんだ!この匂いはぁー?!頭の上のほうでブシュ!!ブシュ!!犯人はおまえかぁ〜この臭野郎!!蛇腹を窓の外に出し、変なマスクをしたダンナがエアーブラシを吹いている。
 あーやっとわかった。私のそばでにこにこしていたのは、私を見守っていたのではなく、エアーブラシのためだったのか。ナースの睡眠を奪うなんて、なんという命知らず。激務のあとの唯一の楽しみを奪った罪は、重い。
 私の怒りはダダモノではないことは、いうまでもない。でもダンナはもともとタダモノではなかったので、「あれぇ〜もう起きたの〜」と。おいおい誰のせいだよ!!ダンナに喧嘩売っても”ぬかに釘””暖簾に腕押し”とあきらめて、がんばって寝ることにしたのであった。