ちょっぴりの勇気

 結婚式を控え、準備に忙しい最中もダンナはガンプラっていた。ガンプラ仲間という仲間もこれといってなく、コンテストを開催しているおもちゃ屋のオヤジと仲良くしている程度。

 その頃はまだ肌を刺すような冷たい風がふいていた。オーバーが手放せない寒い時期。私達のデートって、もっぱらおもちゃ屋が絡んでくる。まぁこれといって趣味のない私には、どこ行こうと楽しかったのだが。

 ある日いつも行くおもちゃ屋で、彼は熱く語りだした。
 「この人の作品、群を抜いて上手いよ。この間コンテスト優勝したし・・・。」
 確かに丁寧かつ作品を大きく見せる技が光っていた。とは思ったものの、相づちを打つようもんなら、延々と語りが続いてしまう。私としては、それだけは避けたかった。私が黙っていると、「あっごめんごめん、つまんなかったね。」と言って大概は終わるのだが、今日は終わらない。モゴモゴと何やら、考え事をしている。
 そして彼は一大決心したかのような勢いで、またしゃべりだした。
 「あのね、この作品の人と友達になりたいなぁ。そうすれば、色々作り方とか作品の事で、話が出来たりするしー・・・。どうしたらいいかなぁ。あっそうだ!!」
 彼は迷いもなく、おもちゃ屋の店長の所へ突き進んだ。カウンターで店長に白い紙切れを手渡している。そして、素早く戻ってきた。その紙切れに自分の連絡先を書いて、店長にキューピット役をお願いしたらしい。ふと、私の中に不安がよぎった。悪いイメージで残っていたJAF・CON。そこに列をなして群がる超オタクな人達。作品は上手だけど、そんな感じの人だったら、どうしよう。これから人生やっていく人の友達ともなれば、私も友達に・・・。大丈夫かよ〜?私の不安をよそに彼はワクワクしている。
 「連絡こないよ。向こうもオタクだったらとおもって、きっと。」と言うと彼はハッとして、
 「あ〜超オタクだったら、どうしよう。自分から連絡しておいて、やっぱり・・・とは。言えないよなぁ〜。」 わくわくモードから、奈落の底に突き落としてしまった。それからというもの彼の頭の中は、不安でいっぱいに・・・。

 そして相手からの連絡が入った。すかさず彼は自分の不安を打ち消すかのように、質問攻め。結局会う事に。会う日は私達の結婚式の打ち合わせ日。彼は弾んだ声というか、ほっとした感じでこう私に言った。「あのね、仕事もきちんとしていて、彼女もいるんだって、話した感じは良い感じだったよ。あっちもね、俺がオタク野郎だったら・・って不安だったんだって。ハハハハァ〜(笑)」
 再びワクワクしながら、寒空の中、ファミレスの駐車場で始めてN君に会った。好青年だった。私もほっとしたのだった。そして、ここから千葉軍団がスタートするはじめの一歩になった。それにしてもダンナの行動力に驚かされるというか、ガンプラおバカというか。羨ましいかぎりである。