The 出産

  「うっ!いたい」鈍い痛みが10分間隔で襲ってくる。もしかして、これが陣痛?21:15のことだった。予定日はとっくに過ぎているし、胎児も大きくなっているから産まれてもおかしくない状態。いやーとうとうきたか!なんて思いながら、1時間位陣痛間隔をはかっていた。

 そして23:00産婦人科へ入院「あー私もとうとう母になるんだわー。」
 まだまだ、余裕シャクシャク・・・。出産の恐怖なんて、さらさらない。逆に家族が増える喜びを感じていた。
 「初産は陣痛始まって15時間位かかるから、早くて明日の昼頃に産まれるでしょう。」と先生に言われ、実感が沸いてきていた。病室に入っても別に病気ではないから全く平然として、陣痛の痛みの時だけ、「痛ー」ってかんじ。痛みが治まると、ケロっとしている。ダンナは時計とにらめっこ。陣痛間隔をはかっている。6分・・4分・・3分・・・次第に間隔も狭まり、痛みも徐々に増し・・うっうまれるーと思いきや、次の日になっても分娩室に入れてくれない。


 うえ〜ん、まだかー!!看護婦に散歩するようにいわれ、しかも階段の上り下りが効果があると・・・。陣痛中に散歩?!まじぃ〜、痛みに弱い私は楽になりたい一心で、歩いた歩いた。でも、ドドドドッドーっと土石流が襲ってくるかんじ。イタイイタイ・・・「助けてー」ダンナにしがみつく。・・・が、ドクターに「その顔はまだまだだな。」と言われてしまう。「うぇー、もうーいたいよー」テレビの音、励ます声なんて、もう雑音にしか聞こえない。

 あーどうしていいのかわからず、優しくしてくれるダンナにつらくあたってしまう。言葉らしい言葉なんて言えず、ただただうなっているのが、精一杯。いやー想像をはるかに超えるほどの痛みが丸一日、日付がかわるころ、ようやく分娩室に入ることが出来た。分娩台に乗り、「あーもうこれですっきりするー」正直、子供のことより痛み気持ちといきみたい気持ちが優先して、変な安堵感に浸ってしまった。


 ・・・が、戦いはこれからが本番だということを私はすっかり、忘れてしまっていた。助産婦さんが「陣痛きたら大きく息吸って、いきむのよー」とリード。
 「はい、いきんでいきんで、もうひとがんばりー」もう汗だく。真夜中の病院で、必死に戦って・・・。ダンナがはいってきた。手に団扇(うちわ)とタオル、左耳のほうから「がんばれー。赤ちゃんもがんばってるぞー。」という励ます声。苦痛から逃れたいという一心だったが、私はダンナの励ます声で<母>を取り戻した。団扇で扇いでくれたり、汗をタオルでぬぐってくれたり、いきむ時私の頭を支えて、いきみやすくしてくれたり・・・、ダンナも〈父〉になっていた。

 「はい、もうちょっとがんばる、がんばる」助産婦の声が飛ぶ。でも25時間の陣痛で疲れ果てていた私は、分娩室入った頃にはヘロヘロ。「はやく出てきてぇー」もう体力の限界。助産婦が別階にいる先生を呼ぼうとするも、手が離せない。そこで代わりにダンナが「先生すぐに来てください」と電話(笑)

 ダンナの連絡後、すぐに先生が来て、がんばって、ふんばって、ふんばって、ふんばって・・・。「おぎゃ〜!!」と大きなうぶ声が・・・。女の子が産まれた。あーなんて、かわいい、「はじめまして。ママとパパとよくがんばったね」
 あんなにつらかった陣痛・分娩が吹っ飛んだ。チャラになった。うれしくて、うれしくて、泣きまくってしまった。そして、ダンナに感謝感謝。ありがとう。分娩室は午前2:00をまわっているが、みんなすがすがしい笑顔。そんな温かい空気の中、ダンナの「俺も胎盤見た〜い!!」には驚かされた。さすが私のダーリン!